
これは、若干17歳の推しに、それはそれは丁寧に容姿を慰められた女の実録である。
時は2度目の緊急事態宣言が出されてからしばらく経った2021年2月末。
わたしが推しているグループは、コロナ禍でもファンを元気付けるため、定期的に各々の自宅からインスタライブを開催してくれていた。
その日は、わたしの最推し🐨くん(17歳)と🐰くん(20歳)のコラボインスタライブ。
いつも通り質問機能を使いながら、良くも悪くも至極適当にファンの質問に答えていた。
🐨 人は見た目が9割ですか?
センスの無い見慣れたアイコンとユーザーネームが突如スマホの画面に映し出された。
こ、これはッわたしが送った質問ッ…!
どうせ選ばれないと思って、アイドルの人間性を試すお決まり質問を惰性で送ってみたが、まさか選ばれるとは……。
🐨 人は見た目が9割ですか? だって
🐰 (食い気味で)いやそれは無いな!
🐨 いや、ちょっとね……そんなことないと思いますよ?本当に。
🐰 それはマジ無いと思います。あのー、逆になんて言うんでしょうね…。あの〜、色んな人の良さがあって…。
ん…?
なんだろう…?
質問が選ばれて嬉しいはずなのに、全然嬉しくないこの複雑な気持ちは…。
そうだ分かった…。
「この質問をした人は当然ブスなのだろう」という前提で話が進み、公的になぐさめられているこの状況が誠に滑稽なのだ…。(※ブスに異論はない。)
🐰 例えば🐨の良さってなった時に、見た目はもちろんかっこいいっすけど、そこ以外にいっっっぱい出てくるんでね…。
気がつくと、コメント欄は容姿で悩む女子たちの書き込みであふれていた。
推しの2人も、つい数秒前までのおふざけ合いが嘘かのような神妙な面持ちで相談に乗ってくれていた。
う…うん…。そそうだよね…。
きっと自分たちと同世代の思春期女子たちが悩んでると思ってこんなに真面目に答えてくれているんだよね…。
いい子たち過ぎて心が痛いです…。
でもね、ごめん…。
\\\\\正体はブス歴27年の大ベテランなの/////
容姿に悩むどころか自虐もお手の物。自身の見た目は諦めて、とりあえず相手の下手に出ておけば間違い無いだろうという腐れ切った打算で平成を生き抜いてきた肝座りきってる系女子なのだ。
🐰 あとは自分自身の中で見た目以外にどこを磨いていって、みんなに見られたときにそれが見た目ってとこより評価されるように自分を作り込めるかってところだと僕は思いますね。
🐨んー。それはガチですね…。9割ってだって……
(沈黙)
🐨いやいやいや…そんなことないですよぉ…
🐰 (おちゃらけながら)自信持ちなよ
こうして「公開お情け会」はそれから約3分ほど続いた。
顔も商品の一部であるキラキラアイドルにこんな愚問を聞いてしまった自分を激しく後悔し、インスタライブが終わってすぐさま同い年のオタ友に報告をした。
オタ友「推し困らせんな」
私「はい」
【完】
ちなみにわたしは中学の卒業論文で「美人論」を執筆し、学年代表に選ばれた経歴がある。中学三年生のわたしは、当時なでしこジャパンで一世を風靡した澤穂希選手を例に出し、「美人は時代を写し出す鏡である」と結論付けた。そこから10年以上の時空を超え、令和時代の男子高校生に「美人とは?」と未だに美人論を問い続けているのは皮肉な話である。